板谷波山の魅力に迫る! 作品の特徴や人気の理由を徹底解説ITAYA HAZAN
骨董好きなら、日本の陶芸界を代表する作家の1人、板谷波山(いたやはざん)をご存知でしょう。これまで単なる「職人」だった陶芸家を、「芸術家」へと押し上げた、近代日本陶芸界のパイオニア的存在が、板谷波山なのです。そこで今回は、板谷波山の経歴や作品の特徴などを紐解き、魅力に迫っていきましょう。
1. 板谷波山とは?経歴を紹介
まずは、板谷波山の経歴について紹介していきましょう。
1-1. 茨城県生まれの板谷波山
板谷波山は1872年4月10日に、茨城県真壁郡下館町(現在の筑西市)の醤油醸造業を営む庄屋の三男として生まれました。本名は、嘉七(かしち)と名付けられました。「人の嫌がるような仕事を自分から積極的にすること」と教える厳しい母親のもとに育ち、冬だろうと冷たい水での雑巾がけを欠かさなかったと言われています。小学生になると軍人に憧れ、卒業すると軍人になるべく1887年に上京を果たすものの、陸軍士官学校の検査で失格になってしまいました。
1-2. 軍人を諦め新たな道へ
軍人を諦めるしかなかった板谷波山は、「国に尽くせないなら自分のために尽くそう」と、幼少期から得意だった絵画を学ぶべく1889年に東京美術学校(現・東京芸術大学)の彫刻科へ進みます。なぜ陶芸科ではなく彫刻科なのかと思われる方もいるでしょう。板谷波山の入学時に陶芸科はなく、開設されたのが板谷波山入学後のことだったのです。ただしこれが板谷波山の作風に大きく影響を与えることになりました。 高村光雲や岡倉天心らに師事し、1894年に大学を卒業します。卒業後は先輩の誘いで石川県工業学校・彫刻科の講師として働きつつ、焼き物の技術・勉強に励みました。そして1903年に講師の職を辞め、東京・田端で貧しいながらも窯小屋を築いて作陶に打ち込むようになります。
1-3. 陶芸家としての才能が開花・数々の賞を受賞
初釜が益田鈍翁に買い上げられるなど好成績を収めるようになると、故郷の名山・筑波山にちなみ「波山」と名乗るようになります。1908年の日本美術協会展など多くの賞を受賞するようになります。戦火で家を失ったものの、地元・下館に移住して作陶を続け、1953年に陶芸家で初めて文化勲章を受章しました。その後も活躍し1960年に人間国宝の候補になるものの辞退、1963年に亡くなりました。人間国宝の候補を辞退したのには、自分は文化の継承者ではなく、芸術家なのだというプライドの表れだったのでしょう。
2. 板谷波山作品の特徴・魅力とは?

次は、板谷波山の作品の特徴や魅力に迫っていきましょう。
2-1. 「陶聖」と呼ばれた板谷波山
陶磁器を芸術の域にまで高めたことから、板谷波山は「陶聖」と呼ばれていることはご存知でしょうか。板谷波山の陶磁器の美しさには、大学で学んだ彫刻の技術や、幼い頃から得意だった絵画の能力も大いに生かされていると言われています。それまで分業が当たり前だった陶磁器作りを、図案のスケッチから仕上げまで1人で行うからこそ、青磁・白磁・彩磁のいずれも色彩・造形共に格調の高い仕上がりになのです。
2-2. 従来の陶磁器との違い
特定の師につかず、独学で陶芸を並んだ板谷波山だからこその独自のスタイルは、近代陶芸界に新風を巻き起こしました。登り窯など共同で使用することが一般的だった窯を、個人において初めて手作りすることで所有したことも、独自のスタイルの確立につながったのでしょう。
2-3. アール・ヌーヴォーとの融合
19世紀後半、欧米のジャポニズムブームが下火になると、国内における陶磁器輸出は衰退していきました。そのような中でいち早くアール・ヌーヴォー様式を取り入れ、和洋折衷のスタイルが高評価を受けました。
2-4. 釉薬へのこだわり
板谷波山の代名詞と言えば、柔らかなパステルカラーの色合いと気品あふれるマットな質感でしょう。これは、釉下彩(ゆうかさい)や葆光彩(ほこうさい)といった釉薬研究のたまものなのです。思うような仕上がりになるまで決して手を抜くことはなく、常に工房には失敗作の破片が散乱していたと言われています。
3. 板谷波山の代表作とは?
ここからは、板谷波山の代表作を見ていきましょう。
3-1. 葆光彩磁珍果文花瓶
1917年の日本美術協会展において一等賞金牌を受賞した、板谷波山の代表作です。淡い色彩で描かれた果物籠や龍・鳳凰・羊などの図案に、葆光彩が施されています。
3-2. 彩磁禽果文花瓶
国の重要文化財に指定されている代表作の1つです。薄肉彫りが全面に施された花瓶です。
3-3. 彩磁延寿文花瓶
「延寿文」と呼ばれる桃の文様が描かれた、板谷波山の傑作に数えられる花瓶です。
3-4. 彩磁椿文茶碗
板谷波山の亡くなった年に作られた茶碗です。椿の花がち密に描かれ、晩年も技術の衰えていなかったことがうかがえる作品です。
4. まとめ
板谷波山は日本の陶芸界を代表する1人であり、陶芸界で初めて文化勲章を受章したことでも知られています。立体感あふれるユニークなデザインや、気品あふれる色使いや質感、写実的なモチーフなどが高い評価を受けており、骨董市場に出回れば高い価値が認められるでしょう。 「アート飛田」では、有名作家工芸作品や絵画・茶道具、古美術品など美術品全般の買取りを行っております。確かな目を持つ鑑定士が、鑑定料無料で査定いたします。板谷波山作品の買取りをお考えの方も、ぜひお持ちください。