2024年04月03日

茶道で使う茶釜には種類がある!そのような茶釜について解説

アート飛田

日本の「わびさび」の伝統である「茶道」をたしなむ方は100万人程もいるそうです。そのような茶道には、茶碗(ちゃわん)・ 棗(なつめ)・茶杓(ちゃしゃく)など、さまざまな茶道具があります。中には芸術的な価値が認められ、高値がつくものもあるほどです。そのような茶道具の一つに「茶釜」があります。茶釜は茶の湯・茶道には欠かせない重要な役割を果たしているのです。今回は茶釜について種類などを詳しく紹介します。

1. 茶釜とは

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「茶釜」は茶道でお茶を点(た)てるため、お湯を沸かすために使用する茶道具のひとつです。湯の沸く音や湯気で茶会を演出する役割も持ちます。一方で、観賞して楽しむ骨董品や工芸品としての価値も備えているのです。 茶釜の素材には鉄が使用されることが多いのですが、金製や銀製に陶磁器製のものもあります。丸く大きな球形で、口の部分は小さくすぼまっています。大きさに幅があり、直径30㎝くらいから、100㎝程のものまであるのです。茶釜の大きな特徴は、お湯の注ぎ口がないことで、茶釜から柄杓(ひしゃく)でお湯を汲み、茶碗に注いでお茶を点てるのです。 茶道では、柄杓を使ってお湯を汲む所作も重要で、優雅に美しく振舞うことが求められます。茶会における立ち居振舞いや所作の一つ一つが風流にも通じ、茶会の見せ場でもあり、茶の湯の奥深さといえます。

1-1. 茶釜のルーツは中国の「鍑」

茶釜のルーツといわれているのが、大和時代に中国から伝わった「鍑(さがり・ふく)」です。鍑は口の大きな釜で、もともとは大陸の遊牧民族が煮炊用に使っていました。その鍑が日本に伝わって、長い年月を経て改良され、鎌倉時代末期から室町時代初期に現在の茶釜と同じようなスタイルになったようです。

1-2. 「炉釜(ろがま)」と「風炉釜(ふろがま)」

茶道の世界ではお客様をもてなす心と、四季を楽しむ風情が重要です。茶道では器などの道具や掛け軸や部屋の飾る花などにまで、おもてなしの気持ちがこめられます。また、茶釜をかける「炉」にも気配りがあるのです。 炉は畳の下に備え付けられている小さな囲炉裏で、42cm角に炉壇を入れ、その中に灰を入れ、五徳を置いて釜をのせます。炉は季節によって使い分けるため、2種類あるのです。5月~10月頃の夏季に使われるものを「風炉(ふろ)」、11月~4月の冬季に使われるものを「炉(ろ)」といいます。 風炉は床に置いて、炉の機能を果たします。可搬式で外部にも持ち出市可能です。また、炉で使用する茶釜を「炉釜(ろがま)」、風炉に使う茶釜を「風炉釜(ふろがま)」というのです。一般的に冬は炉釜、夏は風炉釜が使われます。

2. 茶釜の種類

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茶釜の種類は、芦屋釜・天命釜・京釜の3種類です。芦屋釜は古く、希少価値が高いだけに注目を集める存在です。また、天命釜は重厚感が特徴といわれます。このように茶釜はそれぞれに独自の魅力があり、この章で3種類それぞれを詳しく紹介します。

2-1. 芦屋釜

「芦屋釜(あしやがま)」は鎌倉時代初期に、筑前国芦屋(福岡県遠賀郡芦屋町)で生産が始まっています。室町時代に盛んに作られましたが、江戸時代に途絶えてしまいました。鋳鉄製ながら薄く作られており軽いのですが、重厚感が漂う出来上がりです。 芦屋釜には、胴から口にかけてなだらかな曲線が美しい真形釜(しんなりがま)が多く、胴の部分に花鳥や亀甲や七宝に山水などの文様が描かれています。芦屋釜は品質の高さや上品なデザインが評価され、国の重要文化財に8点が指定されているほど、高い芸術性も備えた茶釜といえます。

2-2. 天命釜

「天命釜」または「天明釜」は、栃木県佐野市の下野国佐野庄天命で、天慶年間(938年~947年)から鋳物づくりが始まったと伝わる茶釜です。いずれも「てんみょうがま」と読みます。天命釜は独創的な造形や荒々しに、やや粗い素朴な鋳肌が特徴です。天命釜は文様が少なく、その素朴な侘びた趣も好まれました。

2-3. 京釜

「京釜(きょうがま)」は、京都三条釜座(かまんざ:現在の釜座通周辺)で室町時代末期から江戸時代にかけて作られた茶釜の総称です。京作とも称されます。無文で肌が滑らかな京釜は、細かく精巧な地紋が特徴で、優雅さも感じられます。茶の湯が盛んな地域に近いだけ、茶人たちの要求に応え、創意工夫が施され多様な造形や表現が行なわれた点も特徴です。

3. 茶釜の注意点

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茶釜はデリケートな面を持っているのです。それだけに、よい状態で長く使うために注意すべきポイントがあります。ほとんどの茶釜は鉄製なので、簡単に錆びが発生します。手で触れると、汗などですぐに錆びてしまうのです。手で触れた後は、帛紗(ふくさ)や懐紙などで丁寧にふき取りましょう。 茶釜を使用した後は、茶釜の水分をしっかりと飛ばし、乾燥させることが重要です。塗ってある漆が焼けるため、火にかけて空焚きは避けましょう。漆が焼けてお湯が濁ったり、水が漏れたりする原因になるのです。 また、磨き砂・クレンザー・金たわしを使用すると、茶釜を傷める原因となるため、使用は避けましょう。きれいに洗ったあとは、湿気の少ない風通しのよい場所で保管することがおすすめです。

4. まとめ

以上、今回は茶道で重要な役割を果たす茶釜について、歴史や種類や特徴について紹介しました。茶釜は単純にお湯を沸かすだけの道具ではありません。おもてなしの精神を重要視する茶会の雰囲気を盛り上げる役割も担っています。茶釜は芸術性や美的要素に溢れた、茶道の精神を知るための道具でもあります。 「アート飛田」は、兵庫県西脇市上野にある、創業から88年続く骨董店です。近代美術工芸・絵画・茶道具・古美術品全般の販売や、買取も承っております。さまざまな種類の茶釜や茶道具も取り扱っております。 当店は長年のキャリアで、作家保証はもちろん、無キズ保証も徹底し、皆様からご愛顧を賜っております。ここ10年はインターネットも駆使して、ネットでのご対応も可能です。日本各地の皆様、古美術品についてどのようなことでも当店までご相談ください。